おばさんであること

「全然!私今まで何してきたんだか

もう、最悪なの」

 

坂の上は驚いてはいなかった

こんな時間に

主婦ならば一番忙しい時間だ

その時間に自分のピアノを聞きに来るなんて

幸せなはずがない

 

「僕もそうだよ

あの頃も幸せじゃなかったけど

今もそうだし

これからもいいことはなさそうだよ」

 

あの頃の彼は本当に幸せそうではなかった

そこに引かれたのだが

あの頃はただぼんやりと

理解しているだけだった

でも、今ならあの頃の彼が

どんなに不幸だったかよくわかる