2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

街の灯り

ミキはそこに自分がすべて捨ててしまいたいと思った 血のつながりを確認し そして、それが何よりもうれしい自分がいることに気が付いた なんど、自分がこの家に生まれたことを恨んだだろう でも、それは間違いだった 苦しんで苦しんで沢村と一緒になるのに何…

発達障害の母

とりあえず、家族に何の心配もないのを確認すると ネコに連絡を取った 村の店を出す営業も忙しいだろうに 雅ちゃんの妹探しまでやっているとは 私も手伝ってあげようと思ったのだ なんとなく、雅ちゃんの妹の気持ちもわからんではないから こちらで幸せに暮…

街の灯り

写真をスマホで撮らせてもらって 大叔父の孫とひ孫だというだけで 嬉しそうに食事にまで誘ってくれる 優しい院長に言われるままに一緒に食事をした その席でショウが自分の子供の時の写真を スマホに出すと 「これ、スイスの学校時代の僕です ひいじいちゃん…

発達障害の母

母は少し嬉しそうだった 口うるさい娘なんかいないほうがいいのだろう どうしたら一番いいのだろう 私には母のすべてを受け入れることはできない 東京に帰ってくると 家の中は完璧に掃除され、私がいる頃よりも 便利な家電に変えられていたり 冷蔵庫の中には…

街の灯り

「それは僕の祖父の兄ですね 僕の祖父の名前は戸田康次 その人は僕の大伯父だと思いますよ 祖父は工学部に進みたかったのに 兄が家を出たから医者にならなければならなかったから その話は僕が工学部に進みたいって言ったときに 聞きました その大伯父は血を…

発達障害の母

「友くんの母親と雅ちゃんの母親じゃ人間が違うからね 雅ちゃんの母親の面倒を見なきゃならないとなると 友くんもうんざりするのは当たり前だよ おばさんとはいえ、人の面倒なんか見たかないよね」 は?私は母のことはよく理解しているつもりでも こんな風に…

街の明かり

感じのいい柔らかな医者で 「沢村先生の奥様だそうで 僕は先生の小説の大ファンなんですよ」 そんな話から入る ここまで来ても爺さんの実家とは思えない 「いえ、お恥ずかしい すみません、ちょっと、とりとめもないことなんですが あの、こちらの病院はかな…

発達障害の母

最近は母、私が喫茶店から帰るのを待っている そして、誰とどんな話をしたか知りたがる 「今、ネコは東京に行ってるんだって 友くんは雅ちゃんの妹がいなくなったって言ってたよ ネコはその妹を探すのも頼まれているらしいから 大変だよね~」 母に限ったこ…

街の灯り

「え~っと、なんて言ったっけなぁ 湯島聖堂の近くの何とか坂病院 いや、今もあるのかわかんないけどな」 具体的な名前が出てきても、まったく信じられなかった 数日後、ショウと二人で河野坂病院を尋ねた 家に帰って、沢村にその話をすると 「ああ、もしか…

発達障害の母

雅ちゃんの妹の立派さや 夫が外で作った子供を文句も言わずに引き取った 母親の心の広さもすごいが その妹より嫌われていた雅ちゃんもかわいそうな人だ 最後は神社で首をくくったというのも わかる気がした 皆、雅ちゃんの旦那とみっちゃんの後家さんの赤ち…

街の灯り

そのお爺さんのところに行くと 話がしたくて仕方なかったのだろう 嬉しそうに、二人を見て 人懐っこく笑う 「ん~?何か聞きたいんだって? この店の4,50年前の話? たかちゃんって男がいた頃?」 そう言ってしばらく考えていた 「ああ、色男でお客が飲…

発達障害の母

「俺たちもびっくりしたさ あそこの父親がよそで作った子供だって 突然連れてきたんだよ ほら、あそこの父親ってよく、県庁のある街に 遊びにいってただろ あのあたりの飲み屋の女に 生ませたらしい あの妹が中学生の時に、その母親ががんで死んだって」 こ…

街の灯り

驚いたことに『やまびこ』はまだあった そこの年取ったマスターにミキは見覚えがあった 「あ、翔子ちゃん、年取ったなぁ!」 いきなりそう言われてミキは真っ赤になった ミキが風俗で働いていたころのお客だととっさに思い出す 翔子という名前は今では一番思…

発達障害の母

「みんな心配してるんだよ 出稼ぎって言ってもお金も送ってこないらしいから ネコはあそこの親に探してくれって頼まれているのさ 連絡もしてこないらしいし」 雅ちゃんの妹はここで何度か見かけたことがある 雅ちゃんに似ていたが、もうちょっと、常識もある…

街の灯り

「あんたのお母さんはたかちゃんに似たとこなんか 一つもなかっただろう たかちゃん、駅前の『やまびこ』って飲み屋で働いてたんだけど それじゃぁ、やってけなくって いやらしい店に努めるようになったんだよ 肉体労働は無理なほどの優男だったからね それ…

発達障害の母

「最近ネコは?」 ネコもこの村の農業に忙しい時期には ここでコーヒーを飲んでいる場合ではないのだろう 「ああ、今、東京に行ってるよ うちの村の特産品を置いてくれる店を開拓に 行ってるんだけどね なかなか、大変そうだよ 今時って、どこも着ぐるみとか…

街の灯り

「なんか、めちゃくちゃやられて それで、たかちゃんが助けに行ったときには すっかり、終わった後でね それで、たかちゃんも散々殴られて あの時は警察沙汰にもなって、すごかったよ~」 でも、自業自得だ あの母と似ている祖母ならば、かわいそうだなんて…

発達障害の母

久しぶりに友くんがコーヒーを飲みに来ていた 手広く農業をやっている彼は忙しい時期は コーヒーを飲みに来ることすらできないくらいに 大変らしい 「久しぶり!忙しそうね」 「いや、人手がないからね 長いこと手伝ってくれていた人たちは いいかげん年取っ…

街の灯り

おばあさんはミキのほうを気の毒そうに見ると 「ミキちゃんにはわかるだろう? あんたのお母さんがそっくりだったからね だいたい、たかちゃんを射止めたのも 私らは恥ずかしがって、夜、お父さんを運んできてくれた たかちゃんにお茶を出すのがやっとだった…

発達障害の母

母が発達障害であるのは間違いない 子供たちの幸せのために何ができるかと考える キャパがないのは仕方がない 何かと覚えられないのは仕方がない おいての心を読んで忖度できないのも仕方ない そうどんなに思っても、どうしてもいらいらと悔しい思いになる …

街の灯り

「それでね、その頃、うちと同じように お父さんが飲んだくれて酔いつぶれるのが あんたたちが住んでた家の娘のふみえちゃん だから、たかちゃんはうちとふみえちゃんちに よく夜、来てたんだよ うちは三人も娘がいるのに 結局、ふみえちゃんがたかちゃんを…

発達障害の母

母はそんな私の言葉など全く聞く気がないようだ 「だって、なんだか、テレビの中の人たちみたいじゃない 今度生まれてくる子供もドラマの中の子みたいだし」 そう言いながら嬉しそうに持って行く あ、そういうことかと納得する 村では誰もが貧しくて、そして…

街の灯り

「あんたんところのじいちゃん、たかちゃんは、もともと、このあたりの生まれじゃないけど 18くらいから知ってるよ うちの父ちゃんが、駅前の飲み屋でぐでんぐでんになると よく抱えてここまで連れて来てくれたからね あたしら、三人姉妹であんたんところ…

発達障害の母

母が後家は妊娠していると言っていたことを思うと そりゃぁ、早く一緒に住んだほうがいいだろう 雅ちゃんの旦那は、みっちゃんちの豪邸から仕事に通い その、旦那の母親は鼻高々で自慢しまくっている 二人が結婚してすぐに、その母親にハワイ旅行を プレゼン…

街の灯り

戸籍は調べたから、名前はわかっていた 離婚した形跡はなく おじいさんが50くらいの時に亡くなっていた 酒屋に行くとおばあさんが 「まぁ、まぁ、ミキちゃん 立派になって、あんたは苦労したんだもの 幸せにならないとね そっちの若い子は息子かい?」 「…

発達障害の母

その父も弟が大学を卒業するとともに がんで亡くなった 気の小さいまじめな人だったから 母のことでは結婚以来相当なストレスを抱え込んでいたのだろう ネコが 「おじさん、いい人だったよな 俺、子供の時に川で釣った鯉をもらったよ」 友くんはネコのその言…

街の灯り

もう、売り払ってしまった昔の家 久しぶりに来てみると この辺りは少しも変わっていなかった 路地を歩いていくと 「あら、もしかしてミキちゃん? そっちの男の子は息子さん?」 「あら~、偉い先生と結婚したんだよね~」 「康太君、弁護士になったんだって…

発達障害の母

友くんがおっかぶせるように 「頭も悪けりゃ、才能もないし 顔も悪けりゃ、性格もダメ だから、心配なんだよ 家を継げば苦労しなくても とりあえず食べていける 親がやったとおりにしてればな それがこの辺の爺さんや婆さんの考えさ まぁ、今はそれじゃ先細…

街の灯り

「僕、こっちに帰って来て 一番に自分の歴史を調べたかったんだ 一緒に調べませんか?」 ミキは自分もそうしたいと思った 生まれた場所、環境、血 恨んでばかりいた自分はいったいどうしてできたのか 沢村の言葉をきっかけに 自分も自分が生まれた理由が知り…

街の灯り

「僕、こっちに帰って来て 一番に自分の歴史を調べたかったんだ 一緒に調べませんか?」 ミキは自分もそうしたいと思った 生まれた場所、環境、血 恨んでばかりいた自分はいったいどうしてできたのか 沢村の言葉をきっかけに 自分も自分が生まれた理由が知り…