街の灯り

「あんたのお母さんはたかちゃんに似たとこなんか
一つもなかっただろう
たかちゃん、駅前の『やまびこ』って飲み屋で働いてたんだけど
それじゃぁ、やってけなくって
いやらしい店に努めるようになったんだよ
肉体労働は無理なほどの優男だったからね

それから、ふみえちゃんの親二人とも看取って
子供も、立派に育てたんだよ
ああ、立派ってわけにはいかなかったけどさ
でも、もう、あれはふみえちゃんの遺伝だから仕方がなかったんだよ」

ショウと二人で帰り道、ミキは言葉も出ない
爺さんなんか大っ嫌いだった
でも、ミキが思ってた爺さんとは全然違っていた

「おじいさん、いい人だったんですね
だいたい、その、駅に近い飲み屋さんに来るまでは
どこの人だったんでしょうね」

ミキはその前の爺さんのことは全く知らない
聞いたこともなかったけれど
今は知りたい

「さぁ、聞いたこともなかったけど
駅の近くでちょっと、聞いてみる?
まぁ、今は知ってる人もいないとは思うけれど」