街の灯り

もう、売り払ってしまった昔の家
久しぶりに来てみると
この辺りは少しも変わっていなかった
路地を歩いていくと

「あら、もしかしてミキちゃん?
そっちの男の子は息子さん?」

「あら~、偉い先生と結婚したんだよね~」

「康太君、弁護士になったんだってね
二人とも苦労したからね、たいしたもんだよ」

もう、おじいさんの世代の年寄りはほとんど残っていなかった
それでも、長いことここに住んでいる人たちに
おじいさんがここに来た頃を知りたいと話すと


「あ、それやったら、ほら、あんたんとこのじいちゃんが
よく角打ちしてた、酒屋
あそこのばあちゃんが、まだ、元気だよ」

それを聞いて二人は酒屋に足を運ぶ
ショウは

「いい人たちばかりですね」

そう喜んでいたが
ミキは自分たち二人が離れた後、きっと、近所の人たちで
その苦労の中身の猥雑な噂をしているに決まっている
そう思うと、真っ赤になってしまう
やっぱりここには戻ってこなきゃよかった