街の灯り

「それは僕の祖父の兄ですね
僕の祖父の名前は戸田康次
その人は僕の大伯父だと思いますよ
祖父は工学部に進みたかったのに
兄が家を出たから医者にならなければならなかったから
その話は僕が工学部に進みたいって言ったときに
聞きました
その大伯父は血を見ると失神するほど繊細な人で
とても医者になどなれないと飛び出して
二度と帰ってこなかったそうです
まぁ、当時のことですから、そんな大叔父を探すこともなく
放っておいたらしいですよ
ああ、そうだ、確か昔の写真が」

そう言って、医者が部屋を出ていくと
ショウが嬉しそうに、

「へぇ、おじいさん、医者の家だったんだね
僕、医者になろうかなって思ってたんだけど
それも、血かもね」

ミキは驚きすぎて腰が抜けそうだった
自分の実家の話など絶対しなかったし
どこからどう見ても、下世話なじじぃだった

古いアルバムを持ってくると
本当に白黒の昔の写真を開いてくれた

立派な古い家の前、見るからにいい家のお坊ちゃん
白いシャツに黒い半ズボン、編み上げの靴
綺麗に切りそろえられた前髪
そこにいるのはかわいらしい上品なおぼっちゃまだった