#小説

.....の無い

緑の銀杏並木 古い校舎 そこここに散らばる学生たち ミキの人生には一つも無い風景 その中に立つ銀縁のメガネの 背の高い、優しげな佇まい こげ茶のワイシャツの腕をまくって 細めのチノパン 片手に持っているのは ノートパソコンではなく 重そうな古い学術…

......の無い

「名刺、もらえます?」 ミキは彼の名前を知りたい、そう思った 彼がミキに恋をしてるのは確かだと思う でも、だからと言って ミキは彼に近づく気はなかった 彼を見てると ミキをおかねを払って抱きに来る以外は すべてが好みの人だった 横を向いて照れる所 …

.....の無い

そんな風に彼が常連の客となって 一年も経った頃 いつものようにミキの部屋に 客として入ってきた彼の様子がおかしかった 最近、なんとなく、イライラしていて ミキが思っている彼らしく無い そう、気にはしていた 上等な人間ならば感情を出すのは とくに負…

.....の無い

おそるおそる、okした 女でもこういうタイプはいる ミキのビジュアルだけ見て 人懐っこく近づいている女 ミキが化粧っ気がなくて 白いブラウスかTシャツに細身のパンツ さっぱりした服装はたしかに風俗の女には 見えないのかもしれない でも、後のことを考え…

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笑顔で彼は 「今の少女、驚いたね!」 ミキは困ったような顔で笑う その困った顔を見逃さず 「いや、面白くてって意味だよ」 優しい受け答えにミキは久しぶりに どぎまぎする 「気にしないで」 そう言ってさっさと行こうとする だって、 やっぱりステージの…

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そんな風花の見送りを 誰もしようとしないのだが ミキは新幹線のホームまで見送った 真っ白な細身すぎるパンツ でも、足は太い 金のサンダル 黒のジャケットにスパンコールのついた 真っ赤なタンクトップ 娘も金の髪の毛にピンクのジャージの上下 スパンコー…

.....の無い

社長が亡くなると 長男が帰ってきて会社を継ぐ 社長の片腕としてやってきた ミキの今までの仕事ぶりなんか 認めるつもりはさらさらなさそうだった 「君は親父がどっかのキャバクラから 連れてきたんだって? お袋が僕の子供の頃に死んで 長いこと独身だった…

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その社長はそんな人ではなかった 事務所ではミキも 綺麗に掃除することや お茶もお客さんや社長の様子を見ながら 心を込めていれたし 電話の受け答えも 丁寧に正確に社長に取りついた 「やはりね。 ミキちゃんはあの当時から どこか他の子とは違うって思って…

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翔子は中学まではそんな暮らしだった そして、少しずつ回りも変わってきた 「翔子?宿題教えて!」 「翔子、また、公園で髪の毛洗っていたんだね 打ちのめしたいママがお風呂くらい うちにおいでよって言ってたよ」 「翔子!頼むよ!カスミに告りたいんだけ…

.....の無い

いつからだろう、彼が心に住み始めたのは もう、記憶に無いほどに時間が経っている 彼が横で笑い 彼が横で不思議などぎまぎした表情で しゃべり、そして戸惑うように 背中を向ける 人生なんて過酷なだけで 何ひとついいことなんか無い そう、思って過ごした…