.....の無い

緑の銀杏並木
古い校舎
そこここに散らばる学生たち
ミキの人生には一つも無い風景

その中に立つ銀縁のメガネの
背の高い、優しげな佇まい
こげ茶のワイシャツの腕をまくって
細めのチノパン
片手に持っているのは
ノートパソコンではなく
重そうな古い学術書

彼が自分のお客で
きょうは外でHをするために
待ち合わせした

なんて認識は吹っ飛んだ
ミキに少し恥ずかしげに手を振る
なんだか、ミキの方も恥ずかしくなって
早足でそばに行く

「翔子さん、なんて白いブラウスが
似合うんだ
君をここに立たせたかったんだ
完璧だ!」

「素敵なところですね
私初めて来ました」

「僕は学生時代からだから
もう、何年になるんだろう
僕の庭なんだ
学生時代からここを好きな人と歩くのが夢で
今、叶ったよ!」