不思議なことを数えれば

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速水としては母にはあまり言いたくなかった
タケオは今でも男娼をやっている
速水はそれはそれでいいと思っている
タケオが自分でやりたい仕事は
別にどんな仕事と言うようなことではなかったのだ

タケオが大学に入ったのも
それは、何となくまともな立ち位置に立ってみたい
男娼とか体を売るとかの夜の仕事仲間に
ちょっと、嫌気がさしたとか
そう言うことだったのだ
しかし、昼のまともな世界に入りなおしてみても
何処も何も変わらなかった
仕事の種類が違うだけで
そして、人がさげすむ仕事を夜やっていると言うだけで
昼の仕事だって同じような人間関係もあれば
嫌なこともたくさんある

タケオやみぃ、そして速水自身
今の仕事が本当にそんなに人に言われているように
悪い物だろうか?

発達障害の母

父の親戚の中での立ち位置がわからずに

右往左往してさげすまれていた母が

私がどんなことをされるのか知っていて

人身御供にしたんじゃないか

父の死を宣告された病気の前でも

自分のことのほうが大事なのだ

それも、ほんのくだらないことで

今思い出してもおぞましいが、そんなことが

次々にフラッシュバックしてきて

最近では母の顔を見るだけで吐き気がする

不思議なことを数えれば

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タケオと速水が新しい生活をはじめ
ミキは新しく生まれてくる赤ん坊のために
何かと速水の手伝いに行った

そして、タケオとの結婚が決まってから
気にはなっていたけれど
聞けなかった、タケオの仕事のことを聞いてみた
いったい、何をしているんだろう
もちろん、速水の財産を考えれば
働かなくても大丈夫だし
何か事業を始めてもいいだろう
そんなことに口を出す気はなかったが

タケオは必ず、夜に出かけていく
帰ってくるのは夜中のようだ
沢田にも

「ねぇ、タケオさん、何の仕事をしてるのかしら?」

そう聞いてみたのだが
沢田も無頓着で

「何でもいいんじゃない
何もしなくたって困ることはないんだし
結婚して二人でいれば
ちゃんとした父親にもなるだろうし」

そんなことを言っているのだ

発達障害の母

その時に、私は鮮やかに五、六歳の頃を思い出した

あの頃、私は年上の従弟

たしか、中学生くらいの男子に

体をよく触られたことがある

伯父の息子で本家の子供になる

今でいう幼女虐待じゃないだろうか

母はあの頃、それを分かっていて

従弟に私を差し出したんじゃないだろうか

あの頃、母は近くの父の親族からバカにされていたし

自分を認めさせるために、私を使ったんじゃないだろうか

その従弟は何かと母をかばっていた気がする

 

 

 

 

不思議なことを数えれば

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タケオがもちろん、速水のことを
何をも変えがたく愛しているのではないのは
よくわかっている
しかし、自分にとって、速水が
ちょうどいい相手であるのはわかっているし
子供のこともタケオが計画的に仕掛けたのだあろう
もちろん、財産目当てではないが
速水が一文無しならば、きっと、目もくれなかっただろう

ミキも速水もそんなことはよくわかっていた
しかし、速水が何よりも望んでいたことで
タケオだって速水が好みであることは確かだ

沢田は嬉しそうに

「一番好きな人と暮らせるって言うのは
何よりの人生のだいご味だよ
速水はタケオ君に首ったけだから
幸せになれるさ
子供もいることだし、タケオ君はバカじゃないからね」

そうミキの手を取った
その幸せはミキにとって何にも代えがたいものだ
そういう男に出会ってよかった
二人の子供が万が一母に似ていたとしても
全く気にならない
そう、そのほうがいいかもしれない

自分のような人間に似なければいい
常識にとらわれて、人の目ばかりを気にしているのなんか
本当にばかげている
ぜひ、母のような人間に似ているように

ミキは今心からそう、思った

発達障害の母

病院に入院して家に父がいなくなったことは

母の中でそうとう嬉しいことのようだった

しかし、口では寂しい心配、不安、そんなことを言う

その弾んでる心はわかりすぎるほどわかるし

母の楽しみは父の入院している病院の場所だった

車で一時間くらい

私は免許を持っているから息子と母を連れて

父の車を運転して病院に行く

村の近くでは一番大きな町だ

スーパーもたくさんあるし

母はスーパーの二階で服を買うのが好きで

父の看病なんかそこそこに切り上げて

すぐに店に行きたがる

 

不思議なことを数えれば

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ミキは幸せそうな速水の顔を見ながら
ハッと気が付いた
自分がくだらないことにこだわって
母を一方的にダメな人間だと決めつけていたんではないだろうか

この世の中の人たちが正しいと決めたレールのようなもの
そんな物に惑わされていたバカだったのは自分のほうで
母のほうが好きに生きた分、賢く自由だったのかもしれない

自分の考え方がもっと、自由だったら
沢田をもっと早く受け入れていただろうし
速水が高校で性依存症とわかったときも
母にすべての罪を擦り付けて
みぃに任せてしまった
でも、そのほうが速水は幸せになったのかもしれないし

人に言わせればAV女優と男娼の結婚だろう
しかし、二人は幸せだし
そう、バカでもない
これでいいのならば、自分が色々考えていたことが
一番バカバカしい