悪魔が来りて・・・

「でも、今じゃ、アメリカの偉いお医者様で

向こうに奥さんも子供もいるんでしょう

武美さんが早苗さんにグダグダ言っていたけれど

まあ、あの武美さんにしては良いこと言ったわよね

だって、妹のあかねさんだっていいとこの奥様なんだから

少しはね~母親として心が痛まないのかしら

早苗さんがしっかり者で、大旦那様にべたぼれじゃなかったら

静さん、大変だったわよね」

 

私はその言葉を聞いて、ちょうど、反抗していた早苗さんに

もう一度感謝の念を抱いた

大学で東京を知り、その中で暮らしていると

どんなにお洒落で素敵にしていても

どこか田舎の水商売の匂いがする早苗さんを恥じていたのだ

でも、そんなこと、何でもないことだ

私を赤ん坊のころから育て

自分は祖父の子供を持てたかもしれないのに

それはあきらめ

一心に可愛がってくれた早苗さんには感謝しかない

それに、今悪口を言われている両親

あの二人だって、大っぴらに私をかわいがることはできないだろう

兄と妹の子供

そう知っても私はショックなど受けなかった

だからと言って、異様な容姿ではないし

いや、私の容姿は東京に行ってもかなり上のほうだ