悪魔が来りて・・・
私は早苗さんのおかげで
常識にとらわれることなく
自分は幸せだと感じていた
それは、早苗さん独特の水商売の女のような
あっけらかんとした、愛とお金だけを信じてる
そんな生き方を基軸に育ったからかもしれない
葬式が終わった後に
父と母が私の前に座った
私は、どうするんだろうと困ってしまった
今更謝られても困るし
私を早苗さんから引き離さないのならば
別にこの二人が何を言ってもかまわなかった
父のほうが口を開いた
「お金に関して、父から私たち二人がもらう分は
お前にすべてあげようと
二人で話し合った
後で、弁護士が来ると思うのでよろしく
それから、他に何か願いがあるのならば
二人でできることは何でもしよう」
私はその言葉に、少し笑いそうになった
あの村のおばさんたちの噂話では
父は中高とそうとうなだらしのない女好きだったらしい
でも、今ではすっかり立派な医者になって
私にそんなことを言う
人間と言うのは面白いものだと感心した
母のほうは一言も言葉は発せずに
頷いてばかりいた