誘惑の花

スピカは親の話はしない

父親の話はもちろんのこと、りさ子のことも一言も言わない

京子はそれが心配だった

父親はスピカを叩いたのかもしれない

りさ子は暴言を吐いたのかもしれない

いえ、りさ子だって手をあげていたのかもしれない

でも、これまでスピカをかわいがったこともあったと思うし

スピカは二人の子供として生きてきたのだ

どうして、親の話をしないのか?

でも、それを京子から言い出すことはできない

言わない理由が何なのかわからないが

そこにはズカズカ入って行ってはいけない気がする

 

そんな毎日の中で

京子は自分の子供たちの絵本を久しぶりに居間に持ってきた

最初は京子が呼んであげていたが

スピカはすぐに覚えて、一人で読むようになった