ミキの遺産

実家に帰ろうか?
今までの小百合なら実家に帰って
母に愚痴れば、すっきりとして次の日を迎えられた
でも、最近は父も母も
雅紀とのなれそめを聞いても、章子が幸せなのが一番といい
康太の実家にしても
もう、どうでもいいようなことを言うだろう
あれから20年近くたっているのだ

それでも、顔を出してみようか
小百合には友人はいないが、いつも母がそうだった
章子の子育ても母をお手本としてきたのだ

母は年の割には若く、いつも健康で
今はボランティア活動に飛び回っている
小百合には心の奥底でボランティアなんて大嫌い!
貧乏で困っている人は、どうせ努力をしないのだから仕方がない
そんな気持ちがあるのだが
もちろん、口には出さない

「ママ、また、乳児院に行ってたの?
もう、そろそろ、自分の体のことを考えたら」

小百合の母は小百合の心の奥底はすべてわかっている
結婚するときに、ものすごく心配したのだが
康太の心が広く、章子は康太に似ていたために
何もかもうまくいったと思っていたのだ

小百合は母の顔を見ると、甘えて全部話してしまおう
そう決めて、感情の赴くままに
康太の実家の話、反発する章子
そんなことを爆発させると

「あら、知っていたわよ
康太さんのご実家のこと」