魔女
一週間くらいすると、部屋が片付いたから
遊びに来いと言う
私は興味津々でくうちゃんと遊びに行った
驚いたのは瑞樹ちゃんのパパもいたことだ
いや、多分、パパではない
瑞樹ちゃんがパパと呼んでいるのだが
若い!私よりも下かもしれないと思った
「いらっしゃい!
ねぇ、見て!おかげですっかり片付いたのよ
あ、これは、私の旦那!」
そう言ってゲームをしている若い男を紹介した
その旦那って男は私を見ると
「お母さんっていうから、ばばぁかと思ったけど
若いなぁ~綺麗だし!」
すると、正野さんは気分を害した様に
「ちょっと、パチンコでもしてくれば!」
そう言って2,3千円渡して追い出した
瑞樹ちゃんが小さな声で
「パパ、行ってらっしゃい!」
そう言うと、その若い男は
「バカ!パパじゃねえわ!」
すると、くうちゃんがすかさず
「パパじゃないの?パパって怖いから
パパじゃないよね!かっこいいし」
くうちゃんにとってパパとは暴力をふるう
怖い人なのだ
くうちゃんはジャニーズが好きで
テレビの番組を見るときジャニーズが出ると大喜びだ
私にはジャニーズの誰が誰だかわかんない
正野さんは私を見ると
「へぇ~あんたも苦労してるんだね」
姉のこと
魔女
ちゃんとご飯を食べさせているのだろうか?
私の中に、チラッとそんな思いは浮かんだが
学生であった私は母親というものは
すべての母親が子供のことを想っている
そう信じていたし、そうじゃない例などは
今考えると、あまりニュースなどで大々的に
取り上げなかった気がする
いや、私が頭からそう信じていただけで
そういうニュースはあったのかもしれないが
世の中全体が母親はそういうものだと
子供たちに刷り込もうと必死だった気がする
私は子供のころ、好き嫌いがひどくて
もちろん、裕福な家でもなかったから
一番好きなものが白いご飯に振りかけご飯だった
きっと、瑞樹ちゃん一緒なのだと思った
姉のこと
姉はそれでいいと思っていた
姉のこと
魔女
次の日から毎日のように瑞樹ちゃんは遊びに来た
くうちゃんは大喜びだ
バイトであるし食費も貰っている
私はおやつを上げたり、食事をとらせたりしながら
お昼になっても迎えに来ない正野さんにあきれたが
くうちゃんに食べさせて、瑞樹ちゃんに食べさせないわけにはいかない
お昼になってご飯に帰るように言ってみる
「瑞樹ちゃん、お昼ご飯の時間だから
一度、お部屋に帰ろうか?」
瑞樹ちゃんはキョトンとしたように
「お昼ご飯?」
そう言って、私に言われるままに部屋を出て行った
くうちゃんと私でご飯を食べていると
瑞樹ちゃんが戻ってきた
「お部屋に入れないのピンポン鳴らしても、ドアは開かないから
ママ、いないんだと思う」
私は仕方なく、ご飯とふりかけだけのお昼ご飯を
瑞樹ちゃんにも用意した
ご飯とふりかけというのはいつもの私のお昼ご飯だ
食費はもらっているが、一か月、五千円だったから
このくらいでいいだろう
夜はカレーにしたり、オムライス、と私の少ないレパートリーで
頑張ってみたりしていた
それでも、ご飯に振りかけだけっていうのは
少し気が引けるものだった
ちょっと、質素すぎるかしら
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