秋風
魔女
引っ越したばかりだと言うのに
正野さんは素敵な服を着ていて
良く似合っていた
私はその頃学生で、いくらバイトで稼ごうと
そのブランドの服には手が出ない
しかし、裕福な大学な友人にはよく流行っているもので
羨ましい目で見た
しかし、瑞樹ちゃんの服は
どう見たって、誰かのお下がりで
サイズは大きいし、色あせているし
親から話されているくうちゃんのほうが
よほどこざっぱりしていた
私は子供を持った母親の気持ちはわからない
子どもにお金をかけるのはもったいないって事だろうか?
でも、親が高い服を着て、子供が貧乏ったらしい服って言うのは
何となくみっともないものだと思った
秋風
魔女
正野さんは次の日
瑞樹ちゃんを朝の10時ごろに連れてくると
「引っ越しの荷物が片付かなくて
ちょっと、遊んでもらってもいいかしら?」
私はバイトという感覚があったから
そんな責任は持てないと思ったが
くうちゃんは大喜びで瑞樹ちゃんを部屋に入れてしまった
正野さんはそれを見ると、あっという間に帰ってしまった
部屋に入っても瑞樹ちゃんは大人しく座って
くうちゃんの持ってくる絵本やおもちゃを手も出さずに
じっと見ていた
秋風
秋風
魔女
でも、私の家では小さなころから
子供に手を挙げることなど論外な家で
親族の半分が学校の先生だったこともあって
子どもは大事にするものだと言う認識だった
くうちゃんを取り巻く環境は可哀そうすぎるのを見て
預かることにしたのだが
くうちゃんは小さいながらもDVの父親の口癖や
母親のだらしない所、そしておばあちゃんのこすっからい所
そんなところが一緒に暮らしていると
くうちゃんの端々に見えてきてうんざりすることもあった
だからと言ってくうちゃんに対してその気持ちを
態度に表すわけにはいかないと
私は学生ではあったがそんな気持ちで
優しくくうちゃんに向き合っていた
瑞樹ちゃんに対するその母親の態度に
私は少し反発した