秋風

イメージ 1

幸せはどこから来るのか
みぃはショウを前に照れまくっていた
ショウは大木祐介をよく知っているので
心から喜べた
しかし、母親の照れる顔は見ていられないから

「速水からプレゼントが届いていたよ」

「あら、あの指輪を用意したのも速水じゃないの?
あの子がこんなに気が利くとは思わなかったわ」

そのプレゼントの大きな箱はみぃの前に置かれていたが
中身は言わずと知れたウェディングドレスなのは
わかっていた

大木とのこれまでのいきさつや
みぃがかなり年上なこと
そんなことを考えると、みぃのほうから積極的には
動けないだろうからと
今回はみぃの周りのすべての人間が
本当なら派手な結婚式にみんなで出席したいのだが
そんなことはみぃ自身が嫌だろうと
それぞれが、二人のために動いた

恵さんを筆頭に、昔ながらの仲間たちが
みぃが一週間は休暇がとれるように頑張り
大木の仕事のほうはショウがカバーし
そして、タケオがイタリアの美しい教会を探し
速水は手作りのブーケを送り

すべてがそろうと、二人きりにして
みんな日本に帰ったのだ
みぃは幸せ過ぎる結婚式を祐介とあげることが出来たのだ
もちろん、祐介もこれが心から願っていたことだと
気が付いていた

魔女

引っ越したばかりだと言うのに

正野さんは素敵な服を着ていて

良く似合っていた

私はその頃学生で、いくらバイトで稼ごうと

そのブランドの服には手が出ない

しかし、裕福な大学な友人にはよく流行っているもので

羨ましい目で見た

しかし、瑞樹ちゃんの服は

どう見たって、誰かのお下がりで

サイズは大きいし、色あせているし

親から話されているくうちゃんのほうが

よほどこざっぱりしていた

 

私は子供を持った母親の気持ちはわからない

子どもにお金をかけるのはもったいないって事だろうか?

でも、親が高い服を着て、子供が貧乏ったらしい服って言うのは

何となくみっともないものだと思った

秋風

イメージ 1

メイは長いこと祐介が好きだったし
メイの周りの友人たちのほとんどが
二人はカップルだと認識していたし
祐介とはゆくゆく結婚すると広言してもいたから
納得は到底いかなかった
日本に帰ると、みぃの会社に飛び込んでいったのだ
みぃは驚いたのだが
大木がそう言っているのならば合わせてあげようと
メイには結婚すると言う風に話したのだ

そこで、メイが帰ると、すぐに速水にこの話をする
そこで、タケオが動いてと言うわけだ
速水は大喜びだ
みぃは大木の気持ちがはっきりしないうちに
いくら、自分の名前を出されたからと言って
それに乗っかることはできない
それをタケオ、ショウ、速水
そして、みぃを敬愛するスタッフ

周りに動かされて、イタリアにやってきた

大木はその小箱がみぃの誕生石で、サイズもしっかりあっていること
花はみぃが一番好きな百合であること
それを聞いて、心は決まった
周りが押してくるからではなく
みぃをもう一度見直してみる
心は少しずつみぃに惹かれていき
こんなに周りに愛されている彼女を敬愛する気持ちは
大きくなっていくばかりだった

魔女

正野さんは次の日

瑞樹ちゃんを朝の10時ごろに連れてくると

 

「引っ越しの荷物が片付かなくて

ちょっと、遊んでもらってもいいかしら?」

 

私はバイトという感覚があったから

そんな責任は持てないと思ったが

くうちゃんは大喜びで瑞樹ちゃんを部屋に入れてしまった

正野さんはそれを見ると、あっという間に帰ってしまった

部屋に入っても瑞樹ちゃんは大人しく座って

くうちゃんの持ってくる絵本やおもちゃを手も出さずに

じっと見ていた

 

秋風

イメージ 1

メイが日本に帰ってしまうと
本当に自分の生い立ちからの呪縛が取れた気がした

日本から帰って来たタケオがニヤつきながら
ホテルの部屋に入って来た

「あれ、タケオさん、もう少し日本にいるんじゃなかったですか?」

タケオはものすごく楽しそうに
シャンパンと小さな箱を渡してきた

「花は俺が用意した、こっちの箱は嫁さん!」

「速水さん?僕に?」

「ハハハ、違うよ!
いや、そうなんだけど・・・
あ、もう、時間がないから
すぐにこれ持って、ここのレストランに行って
予約してあるから!」

祐介は何が何だかわからない

「ちょっと、うちの社長と結婚することにしたって
本当のお話だろうな!」

「あ、いえ、その・・・・」

「え?違うの?」

「いや、あれはメイを帰すための、方便というか・・・・」

「それだけ?」

「あ、違います。すごく気になってはいますが
社長だし、なんか、僕の高望みって言うか・・・」

「もう、めんどくせえな!
社長のこと好きなんじゃないの?!」

「あ、好きです!」

秋風

イメージ 1

メイは信じられないように

「私聞いてないよ
叔母さまだってそんなこと言ってなかった
パパは私の恋人は祐介だと思っているし
ゆくゆく、結婚するものだと安心してるわ
何の間違いなの?」

祐介は、それは違うと思った
メイは知らないが、メイの両親は
祐介が大木の家で育てられるようになった経緯だって
よく知っているのだ
大木の家が娘のまいた種で兄が責任を取って
祐介を引き取っているという話はわかっていても
祐介の母が父を殺したことは
その血にエキセントリックなものがあるのは危惧しているはずだ

大木の家では常に優等生で育ってきた祐介であったとしても
娘の結婚相手には心から喜べないはずだ

魔女

でも、私の家では小さなころから

子供に手を挙げることなど論外な家で

親族の半分が学校の先生だったこともあって

子どもは大事にするものだと言う認識だった

くうちゃんを取り巻く環境は可哀そうすぎるのを見て

預かることにしたのだが

くうちゃんは小さいながらもDVの父親の口癖や

母親のだらしない所、そしておばあちゃんのこすっからい所

そんなところが一緒に暮らしていると

くうちゃんの端々に見えてきてうんざりすることもあった

だからと言ってくうちゃんに対してその気持ちを

態度に表すわけにはいかないと

私は学生ではあったがそんな気持ちで

優しくくうちゃんに向き合っていた

瑞樹ちゃんに対するその母親の態度に

私は少し反発した