悪魔が来りて・・・

早苗さんは目を吊り上げて

 

「何言ってんだい、能無しのくせに

うちのパパが何度、あんたに金を出したかは聞いてるよ

そのうえ、まだ、むしり取ろうってこと?

静ちゃんはパパに私が任された大事な娘だよ

大学を出てからが一番重要なのさ

いい人と結婚してもらわないとね

お金はこれからのほうがいるのさ」

 

その叔父はちらっと、あの二人のほうを見ながら

 

「これからのお金ぐらい、あの二人に出させれば!

海外で医者やったり、セレブの奥様やってんだろう

静のお金ぐらい、出してやるのが筋ってもんさ」

 

私は早苗さんがうまくやってくれるに決まっているから

こんな小汚い席にいたくなかった

すぐに席を立って、台所でも手伝おうと入ろうとすると

中で姦しい噂話が始まっていた

 

「あの二人、良く帰って来れたもんだね」

 

「そりゃ、大奥様はショックで大騒ぎして

あの二人を殺すって、すごい剣幕だったけど

大旦那様は何も言わずに

智彦さんは大学に戻し、あかねさんは

自分の東京の知り合いのつてをたどって

お金持ちの社長に嫁がせたんだからね

葬式くらい帰って来なきゃ!」

 

「それにしたって、村の語り草だよ

兄と妹で子供作っちゃうなんてね」

 

「だから、大奥様は早苗さんに頭が上がらないんだよ

早苗さん大旦那様のことパパって甘えてるだけの女じゃなかったね

静ちゃんを立派に育てたんだからね」

 

「でもさ、静ちゃん、あんなに綺麗で立派な大学にも入って

優しいし、何の問題もないじゃない」