馬の耳
沙理は冷たい目で母親を見る
「ママが一人で行って来てよ
お小遣い、絶対もらってきてね」
「え~一人で行ってもね~
お祖父ちゃんの書斎の本は?」
「もう、全部読んだ
面白いのは推理小説だけ
他はノウハウ本!
それもバカらしいのばっかり
『運をつかむ力!』とか『お金持ちになる人間』
とか、なんか小学生みたい!」
健介は話を聞きながら噴出した
それは常々、健介が思っていたことだ
沙理はものすごい勢いで大人になっている
だいたい、自分はこの春、小学校に上がるのだ
祖父に言う言葉ではない
「沙理!言いすぎ!」
健介が注意すると、
「わかってる!こんなこと口に出しちゃいけないこと
でも、ママってはっきり言わないとわかんないから」