誘惑の花

それから、スピカは数学の専門家になり

アメリカに留学し、世界でも有数の学者になった

 

りさ子はそんなことは全く知ることもなく

あれから一度も連絡はよこさなかった

京子はそのことに呆れるよりも

ホッとしている

 

人間の繋がりなど、本当にわからない

 

アメリカのスピカに送る荷物の相談に健作がやって来た

健作と言うのはスピカの父親の名前だ

 

「京子さん、スピカから京子さんの梅干しが欲しいって

メールが来ていたんですよ」

 

「まあ、嬉しいわね」

 

京子はスピカの本当の祖母のような気持だが

スピカがこんなに立派になって

このことを、田舎の俊哉の妻である美奈子に

教えなくてもいいのかと考えるときがある