誘惑の花
心が何となく、痛くなる
スピカは俊哉と美奈子の孫なのだ
健作に相談すると
苦々しい顔をして
「りさ子は京子さんにスピカを預けて消えてしまった
その、スピカの母親は僕らのところに訪ねてきたこともない
いいんじゃないですかね
僕はスピカの将来を楽しみに、お金を増やして
彼女が必要な時にすぐにいくらでも出してあげようと思っています
嫌は話だけど
あのスピカの母親でしょう
僕らが今、そんな生活をしていると知ったら
お金をせびりに来るような人間じゃないでしょうか?」
健作とは何でも喋れる仲になっていたから
他の人には言わないようなことでも話してくれる
京子は、もう、長いこと郷里に帰っていない
もう、親族もほとんどいない
でも、美奈子がどうしているか、知りたくなったのだ
それは、あの時、俊哉が自分を選ばなかった嫉妬
それが、今も心の奥にあるからかもしれない
スピカのことは話さないにしても、今、もう一度会いたい