誘惑の花
田舎にはたくさんの空き家があった
京子の育った家は、まだ、若いころに
両親が亡くなったのをきっかけに、更地にして
安い値段で従弟に売った
従弟はそこも売って、子供たちが住んでいる大阪に行ってしまった
空き家は珍しくないのだが
久しぶりに行った、その家は暗く、そして古い
俊哉はここに入り婿となり、美奈子と二人の娘を作ったのだ
美奈子の両親は、もう、生きてはいないだろうが
美奈子はどうしたのだろう
近所の家の縁側で柿を向いている奥さんに声をかけた
「わたし、ここの美奈子さんの友人だったものですけど
今は、住んでいないようなんですけど・・・」
その奥さんは誰かと話したくて仕方なかったようだ
その手元の柿は渋柿で、干し柿にするために
皮をむいていたらしい
京子の子供のころとちっとも変わらない風景にホッとした
でも、その横にはしっかりスマホが置いてあって
動画を見ていたようだ