誘惑の花

ああ、やはり親子なんだな

二人はテーブルの上のケーキはそっちのけで

数学に取り組み

自分なんかが育てるよりも

この父親と毎日、数学を解いて

暮らしたほうが幸せなんじゃないかと思う

家に帰る道、スピカは幸せそうだった

 

「あの人がお父さん!

すごくよかった!

なんだかお話みたい!

ほら、お父さんは怖い人ってずっと思ってたから

あんなにやさしくて、あんなに何でも知ってる人

塾の先生よりも、頭がいいのよ

それが、私のお父さん!

すごくうれしい」

 

京子は寂しく思いながらも、それから父親に何度も会い

スピカが一番、幸せに暮らせるように

話し合ったのだが、いつだって父親は京子の意見を真摯に聞き

スピカを迎え入れるために、マンションに引っ越し

学校を転校しなくていいように

こちらの学区に越してきてくれた

この近くならば、京子も色々と手伝えるし

様子を見に行ったり、料理をしに行ったりと

寂しい思いはしなくていい