誘惑の花
スピカのうっすらと覚えている父親
いつだって、母親の側に座って母親を触っていた
色の白い背が高い、テレビの中のかっこいい役者さん
そんな見た目なのに、すぐにスピカを蹴ったり
どなったりした
それが父のすべてで、そうなると母親も一緒にスピカを
殴ったり蹴ったりした
ここにきて、今まで京子とずっと二人きりで
お父さんとお母さんは?そう聞かれることもあったが
そんな恐ろしいものはいらない!そう思っていた
「怖い人よ!いやだ!京子さん、どうして会いに行ったの?」
京子はスピカの父親から聞いた話によると
スピカにはほとんど会っていないと言っていた
こんなに、はっきりと怖い人だと言うのはなぜだろう?
スピカを傷つけないように
「お父さん、覚えているの?どんな顔とか?」
スピカはその俳優が出ているCMを思い出し
「あの人そっくり!だから、あのチョコレート嫌いなの」
京子は混乱した