誘惑の花

その夜に電話があり

何げない話をしながら

俊哉が

 

「ちょっと、出れる?」

 

時間は夜の10時過ぎ

京子はためらいもなく

 

「いいわよ」

 

京子の家はその地方では、誰もが尊敬するような家ではあったが

両親とも京子が大学に行った頃から

京子には何も言わなくなった

この辺りではそんな難しい大学には誰も行ってなかったし

学費の半分は奨学金とバイトで賄っている娘に

その頃から我が子ながら自慢の娘だと思っていたし

東京から帰って来てからも

それが失敗とは思わず

田舎で結婚相手を探す気で帰ってきてくれて

ありがたいことだと思っている

今の喫茶店もオーナーの親戚からは大変喜ばれている

夜のそんな時間に出て行ったとしても

何の文句も言わない

 

家から少し行ったところで軽トラックが止まっている

こんな夜に誘うのに軽トラック!

そう言えば店長が褒めていた