誘惑の花

「すぐに住所と電話番号は覚えたんだろうな

でも驚いたことに、覚えていたのは美奈子ちゃん

俊哉が財布をここに忘れたんだよ

美奈子ちゃんがスラスラと電話番号を言ってさ

あの時は驚いたね」

 

店長は佐由美に同意を求めると

 

「あ、でも一緒に仕事してて美奈子さんって

何でも数字を暗記するの得意だったから

チラッと見ただけでも覚えられたんじゃないかな~

でも、俊哉さんほどのイケメンに好かれていたら

気にならないわけないですよ

電話番号はしっかり見てたんじゃないですかね」

 

「それを言うなら俊哉だって

財布忘れるなんてありえない!

レジの横に置いてあったんだろう?

怪しすぎるよ」

 

「とにかく、その電話で俊哉さんは何かを確信したんでしょう

それで、ドライブに誘ったってことですよ

それに、あの頃、美奈子さんが家に帰りたがらなかったでしょう」

 

「ああ、お姉さんが出戻りで帰って来て

家の中をひっかきまわすって悩んでいたしな」

 

「そう!そのお姉さん、親の貯金を勝手に持ち出して

そう言えば、今も行方知れずですよ」