逃亡
玄関を開けると、そこに二人が立っていた
かずさんと巴さんだ
久しぶりのかずさんは年は取っていたが
優しそうなたたずまいは変わらず
巴さんは少しふっくらして、美しくなっていた
外の騒ぎが聞こえたのだろう
二人は私とシズカを見て、すぐに悟ったようだ
「巴!あんた、何してるんだい!
さ、帰るよ!」
すると、かずさんがのんびりと
「まぁまぁ、お母さん?
よかったらお茶でも飲んでいってください
ちょうど、美味しいお菓子を巴さんが
焼いてくれたばかりなんですよ」
かずさんには不思議な落ち着いた雰囲気があって
シズカはそれでもいいかと言うような顔になった
私が思うに、欲深いシズカはお菓子に惹かれたのだろう
大人しく、居間に入って行った