逃亡

新幹線が九州に近づいてくるにつれて

段々、私は不安になって来て

本当に巴さんに会わせていいものか

ショウの言葉がよみがえる

それでも、私たちは博多に着き

二人で九州に降り立った

 

「あんたを追いかけて東京に行った以外

長旅ってしたことなかったんだよね~

あの時は頭に血が上って、

あんたを憎むことしかしていなかったから

余裕なかったけれど、今回は楽しかった~

旅は道ずれって本当だね

一人よりも二人!楽しかったね~」

 

私は何より、彼女の本音を吐き出させたから

そのことで、なんだかサッパリしたのかもしれない

それにしたって、いい気なもんだ

人は理屈じゃないよ!

まだ小さかった時に村の誰かに聞いた話だけど

理屈じゃないのもほどがある

 

「まず、ホテルを決めよう!」

 

「え?そこに泊めてもらえないかね

また、お金がかかるのかい?」

 

なんてずうずうしい

まぁ、田舎のおばちゃんなんかこんなものだ

 

「今はあんたが家のこと好きにできるんだろう?

お金はたっぷりあるんじゃないかい?」