逃亡
部屋に入れると、彼女は
「あの時、イライラして壊したり
バラバラにした家具は綺麗に直したんだね」
この女は自分からそんなことを言う
警察に突き出してやろうかと思う
「あたしはこの部屋がいいな」
小さなアパートだ
「そこはショウの部屋!
あんたは私と一緒の部屋、ベッドに横に寝てもらうよ
だいたい、警察に突き出したっていいのに
ここに泊めてあげるって言ってるんだからね」
「警察?なんでだい?私は何も悪いことはしてない
うちの娘をかどわかしたのは
あんたら夫婦だろう?」
訳の分からない人間だ
もう、本当に警察を呼んで追い出そうか
「ただいま!あ、こんばんは!
ばあちゃんの友達?
俺、すぐに夕飯、作るわ」
「この男の子に貢いでいるのかい?
小汚い婆さんだね~」
ショウがその言葉に
「ばあちゃんはそんなんじゃないよ
この人、本当にばあちゃんの友達?」
ショウに事情を説明する
ショウは話を聞きながらも、手早く夕飯の準備をした
「ふ~ん。変なおばちゃんだな
まともじゃないのはわかるよ
でも、今日の酒粕漬けのたらはうまいから
食ってみなよ
ばあちゃん、俺が生きてきた世界って
皆、こんなんでさ、理屈なんか通らないんだよ
なんか懐かしい気がするよ
名前はなんて言うんだ?」
腹が空いていたんだろう
ショウの作った料理に飛びついた