逃亡
拓はその嘘の端正な顔を曇らせながら
もう、観念したのだろう
私が少し話の口火を切ってやる
「あんたの実家は北区の小さな工場だったんだよね
お姉ちゃんが一人」
「ばあちゃんすげえな!探偵でも雇ったのかよ?
その通り、父ちゃんが酒飲みだったのもあって
そのうち、工場はやばいことになったんだ
俺が中学の時
それで、やばいやつらから金借りちまって
あっという間に親二人は首をくくった」
私がたどり着いた事件もそこだったのだ
「当時、OLだったお姉ちゃんは行方不明
あんたが一人で残された
木佐幸喜が、あんたの本当の名前だね」
「ああ、姉ちゃんはもしかしたら、あいつらに捕まって
売られたのかもしれないけど
それ以来会ってないから、わかんない!
多分、借りた金は工場を売ったお金で足りたはずだけど・・・
俺はこの体格だったから、組織に入って貸した金の回収係に
なれって言われたんだ」