逃亡

「ありがとう

俺、自分があいつに遠く及ばない人間だったってことが

なんか吹っ切れなくて

それに、先生と暮らしていて

随分、いろんなことを知ったんだ

小学校も中学もまともに行かなかっただろう?

でも、チェリーとか見ていて

そんなの関係ないしって思ってた

だって、チェリーは有名私立校にずっと通っていたけど

一緒に料理したりしてると

5グラムとかさえ何のことかわからない

学歴とかいらないって思ってた

俺が生きてきた世界も、学歴よりも

お金を増やせる人間、女にもてる人間

料理がうまい人間、気が利く人間

そんなことが大事だったのに、先生との生活は

そんなことは全く関係なかった」

 

ショウが上のカーストを見てしまったんだなと

感心した

その先生とやらと付き合うことは、お金には代えられない

経験を積んだって事だろう

 

「特にお金に関しては笑われた

何を置いても金もうけに走ることって

俺らの世界では、すごいことだったのに

一番大事な女にもてるって言うのも、恥ずかしいって言うんだ」

 

ショウの今まで住んでいた世界

ちゃんと学校に行くなんてことは親にもなかっただろうし

親が子供をちゃんと育てなければいけない

なんてこともない

誰もが毎日を生きていければいいのだ

次の世代のことなんか考えない

その時が楽しければいい

ショウはこの数か月の間に

そこから抜け出たのだろう

 

「先生とやらに会ってみたいね」

 

すると、嬉しそうに画像を見せてくれた

美しく賢そうだ