ミキの遺産

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母の言っていることは正しい
正しいけれど、別にいいじゃん
それがすべてだった

母に言われたとおりのするのは、間違っていないかもしれないが
少しもやりたいことじゃない
小さなころから、そう、思っていたのだが
だんだん、父も同じように考えているのを知って
母に隠れて、こっそり、自分のやりたいことをやるのは
楽しかった

雅紀に出会えたのも、勇気を出して、母に言われたことの
真反対をやってみたからだ
そして、かけがえのないものを手に入れた

母がいまだに良く思っていないのは知っている
でも、母の言うことを聞いていたら
絶対につまらない人生を送ると思う

だって、母の人生がつまらないんだもの
何が楽しくて生きているのか、さっぱりわからない

誘惑の花

スピカの寝顔を見ながら

りさ子にいったい何があったのだろう?

そう思っているとスピカが目を覚ました

スピカは周りを見回して、泣きそうになったが

泣いてはいけないのを思い出すように

ぐっと唇をかんだ

ああ、そう言えば、夫がDVをすると言っていた

可哀そうに、好きに泣くこともできないのだろう

 

「何か食べる?おしっこでない?」

 

優しく聞いてみた

すると、りさ子が持ってきたバッグに飛びついた

中にコーラ入っていた

それを開けると、ごくごくと飲みだした

もう、生暖かくなっているコーラ

子供にはどうかと思う

どっちにしろ、少ししか入っていなかったから

足り無さそうにペットボトルを見つめた

ミキの遺産

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小百合はその言葉で、突然切れた!

「何言ってるのよ!
ママがどれだけ苦労したと思ってるの!
生まれて、2歳から早期教育の塾に通って
幼稚園のお受験して
あの、小学校に入るのも、どんなに気をもんだことか
それからも、お友達のこととか
中学に入ったら、お勉強も心配になって
一生懸命家庭教師を探したり

それを、風俗にやったおばあちゃんと一緒にするなんて!
あなた、何を言ってるの!」

章子はこうなるだろうと思っていた
母は少しバカだ
言っている意味が解ってないのだ
母の思い通りにしようとする
それが全くいいことだと信じて!

こうなると、どうせ止まらないのは知っているのだが
父親の親族のことだ
章子は父のほうを応援したかった

誘惑の花

心配にはなったが、それ以上どうすることもできずに

ラインの交換をして、別れた

それから3か月

何の音さたもなかったが、あれからうまくやっているのか

私のような田舎が一緒なだけのおばさんに

相談するなんて、思ってもいないのかもしれない

京子はそんなことを考えながら過ごしていた

 

彼女がどんな運命を送るにしても

自分には関係ないことだと思い始めたころ

 

「今から、言ってもいい?」

 

そんなラインが入った

住所を教えると、1時間後にはスピカとやって来た

何日かスピカを見てくれと言う

私はとりあえず、頷いた

すると、りさ子は嬉しそうに

 

「良かった~助かる」

 

「ねえ、ご主人とは別れたの?」

 

すると、困ったような顔をする

俊哉が嘘をつくときと同じ顔

 

「うん。まあね。何もかもうまくいきそう」

 

そう言って、ミッキーの大きな顔が書かれている

大きなカバンを置いて、出て行った

スピカはここにきて、すぐに寝たのだが

その顔を見もしないで、嬉しそうに出て行った

ミキの遺産

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小百合が止める間もなく
章子はすらすらと読み進め

「へ~パパのお母さん?
おばあちゃんて大変な人だったのね
ミキおばさんもみぃさんも、そんな感じの仕事してたんだね
可哀そう!
中学卒業して、すぐに、売られたような物でしょう
でも、そこで、のし上がって
あんな大きな会社作るとか
パパを東大に行かせるとか、ただもんじゃないわね
今じゃ、毒親とか言う人だったのかもしれないけれど
どんな親でも、子供がしっかりしてればいいって
見本みたいじゃない
さすがパパの親戚ね~」

そう、何事もないように言って
冷蔵庫からジュースを取り出し

「まさか、ママ、そのことで落ち込んでるんじゃないでしょうね」

そう言われて、小百合はほとんど泣きながら

「騙されてたんじゃない!
そんなこと一言も言わないし!」

章子は少しがっかりした様に

「ママならそう思うでしょうね
でもね、私だって、似たようなものかもよ
ママの言うとおりに、これまでやって来たんですもの
お母さんの言うとおりに中学から風俗で働き始めた
ミキおばさんと同じ!」

誘惑の花

その少し、ずるそうに笑う顔

俊哉にそっくりだ

 

「どうするの?」

 

「おばさん誰にも言わないでよ!」

 

そう言って周りを見回す

 

「うちの東京に出てから、ずっと仲いい友達がいるんだけど

その子の後輩がお金に困っててさ

それで、バイトしてくれるって言うの」

 

京子は何のことかわからずに

後の話を待つ

 

「その子が3万でうちの旦那と寝てくれるって言うの

それなら、立派な離婚の理由になるでしょう

それに、暴力だし、娘のことは全く可愛くなさそうだから

サッサと別れられると思うの

うまいこと行けば、慰謝料だってもらえると思うから

いい考えでしょう」

 

京子は何も言えなかったが

そんな暴力男が、その、話の真相がわかった時が

怖い気はした

でも、りさ子は俊哉のように、楽しげに笑った

ミキの遺産

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汚らわしい
小百合にはそんな気持ちが心にいっぱいに広がった
落ち込んで、夕飯の支度も忘れてボウっとしていると
章子が帰って来た
あまりのショックで、章子にこの調査書の存在を知られてはいけない
そんなことすら考えられなかったのだが

「あら、ママ、何か探偵社に頼んだの?
雅紀君の家のことじゃないでしょうね
間違いのないちゃんとした家よ
だから、雅紀君のことで悩んだりしてたんだけどね」

そんなことを言いながら
調査書をのぞき込む
ハッと気が付いた小百合は慌てて、片付けようとしたが
もう、遅かった
さっと、一枚、章子は取り上げた
雅紀のことで母親が少しも賛成していないのはわかっていた
こんなふうに調べたりしても
章子が雅紀と結婚しようと決めていることは変わらないのに
それでも、何か困ったようなことが見つかるのは嫌だ

「なんだ、パパの実家?
へ~ミキおばさん、昔は相当綺麗だったのね
あ、ここ、パパの実家?」