逃亡

「あの、いいんですか?

私と旦那さんには、本当に何もなかったんですよ」

 

「大丈夫!わかってる!

巴さんが気にすることじゃないのよ

あの二人、かずさんと旦那の幸せのためよ」

 

「え?あの二人も何もないですよ

私、あそこでは、ずっとかずさんと同じ部屋で寝てるんですから」

 

私は首を振った

 

「そう言うことじゃないの

あの二人は体の関係なんかでは計り知れないくらい

深い関係なのよ

それは、もう、何十年も昔から」

 

「え?でも、親せき?叔母と甥とか?」

 

「そう言うことになってたけど

本当は違うの

田舎では、人の口には戸を建てられないから

そうなってたけれど

かずさんは夫の実家の父親のお妾さんだったの

そして、二人は夫が中学の時から惹かれあってたと思う

せめて、これからくらいは

一緒に楽しく暮らしてほしいよ」