風邪をこじらせて
私は戸田君に恋をしていたわけでも
愛していたわけでもなかったから
その人とは真剣に愛し合った
それでも、結婚には至らなかった
父が反対したからだ
反対の理由は彼が大学に奨学金で来ていたから
私はそれは素晴らしいことではないか
お金はないが勉強したかったのだ
しかし、父の言うことは聞いた
それは、やはり、中学の時のことがあったからだ
今の夫と結婚して、雅人が無事に生まれた時に
ああ、あの時と同じだ
あの時は若かったけれど、そんなに重い出産でもなかった
そして、雅人が男の子だとわかった瞬間
あの時の子供は女の子だったと思った
それからも気にはなったが、中学生を母親に持った子供は
きっと不幸だっただろうと言うことがわかっただけで
自分で知ろうとはしなかった