風邪をこじらせて
それから、雅人が留学するまでの長い年月
夫がどんな人間であるかわかり
でも、それにまっすぐに怒れない自分がいる
私には別にどこかで育っている子供がいる
それも中学の時にできた子供で
夫はそんなことは知らないままだ
それを考えると、卑怯で男好きで
夫にまっすぐ向き合っていないのは
私のほうだ
だから、あんな、嫌な女と不倫している夫にも
十分な理解をしているのだ
雅人がいなくなった私はすぐにあの時の赤ん坊を探し始めた
父は癌でとっくに他界していた
母に
「ねえ、あの時の子供はいったい、今、どうしているの?」
そう聞くと、案外よく知っていた
「あなたには話さなかったけれど
パパの後輩に子供ができないで悩んでいる人がいてね
それで、本当のことを話して
あの子を育ててはくれないかと頼んでみたの」