風邪をこじらせて

彼女は私と夫の間に愛がないことを知っているし

一緒に住んでいても、話もめったにしないような

一緒に笑うこともないような関係だと知っている

だから、私と仲良くして離婚してもらおうと思っている

そのために、私とおしゃべりしたいと呼びつけたり

ランチに誘ったりするのだ

そんな意図は見え見えだ

ただ、夫は彼女をお得意様だから相手にしているだけで

愛しているわけではないから、私が離婚には応じない

離婚することで雅人のこれからの将来に

傷がつくようなことは絶対にしたくないし

夫も本気で愛している人間がいるわけではないのだから

どんな状態であっても、一緒にいたほうがいいに決まっている

 

私はそんなことを思いながら坂の途中のカレー屋の前に立った

さっき、断ったけれど

やはり顔がみたいと思った

 

すると、小学生がぶつかって来た

 

「あ,おばさん、ごめんなさい!」

 

そう言って元気に入っていく

あ、雅人の小学校時代にそっくりだ