悪魔が来りて・・・
祖母は穏やかな優しい人だった
小さな私は、大人たちの間で
いったいどんなことが起こっていたのかちっともわからなかったが
早苗さんは面白いほど負けず嫌いで
祖母に負けたくないと言う気持ちだけで生きているようだった
今なら、私にもその気持ちはよくわかるが
当時は穏やかで口数が少なく
それでも何か苦しいものを胸に秘めている祖母に対して
早苗さんが『負けるものですか!』と口に出したりするのを
おかしく思っていた
私は祖父にはよく遊んでもらったりしたが
祖母に声をかけられたことはほとんどなく
大人しい不思議な人だと思っていた
早苗さんは祖父からたっぷりお手当をもらっていたらしく
自分のお洒落をするお金と
食べ物に関するお金は、毎月、もらうのでは足りないと
祖父に言えば、祖父は大きな財布から
10万円の束を私にくれた
「この子にはうまいものをたくさん食べせなきゃな
それに、かわいらしくしてやってくれよ!」
私はその名目で、田舎の子が絶対に着ないワンピースや
おしゃれなコートを買ってもらい
高級な食べ物をたくさん作ってもらったが
子供の私の物にはそんなにお金がかかるはずもなく
その実は、早苗さんの服や着物
お爺さんに食べさせる牛肉なんかに使われていた