馬の耳
家など建てたくなかった
健介としては、一生、賃貸がよかった
それを家を欲しがる嫁、実家の父親に頼み込んで
三分の二以上の資金を出し、嫁の思うとおりの家を建てた
うんざりするほど
自分たちのおかげだと口にする義父母
嫁すら普段の生活で、それを口にする
健介は海外勤務が多いことを、本当に良かったと思った
家を建てれば、妻はついてくるとは言わず
海外の一人暮らしは、楽しくて仕方がなかった
次は子供だ
子供を作らなければならない
嫁のそんな言葉は健介にとって不思議なことの一つだった
嫁は性生活が嫌でたまらないらしいのに
そんな様子を可哀そうに思い
「いいんだよ
僕だって、それが夫婦の愛のすべてだとは思っていないから」
そう言ってみたりするのに
「孫の顔が見たいって、煩いのよ
弟のところの嫁がアレでしょう
うちできる孫が楽しみで仕方がないの」
弟のところがアレと言うのは
弟の嫁の容姿の問題だ