誘惑の花

「でも、あの美奈子って子だって

H商業だよ!」

 

彼女の言外の意味は解っていた

いくらしっかりしているとはいえ

H商業に中学から行った女の子たちは

俗にいうズべ公と言われるような子たちで

H商業ならばアルファベットが書けなくても入れる

いや、九九が全部言えなくても入れる

そんな学校だった

中卒の俊哉から見たら、かなり上かもしれないが

国立の大学を出た彼女からしたら

ゴミみたいな存在だ

 

「あんな連中、気にするなんて

京子、いったいどうしちゃったの?

今は出版の仕事、バリバリやってるんでしょう?

羨ましいわ~、私も東京の公務員試験受ければよかった」

 

そんなことを言いながらも住所は教えてくれた

 

「あ、でも、これって、中学の時のだよね」

 

京子が心配して言うと、彼女は笑って言った