誘惑の花
小さな田舎の町だ
悪仲間は固まっている
佐由美の彼だって、そんなところにたむろしているレベルだ
そこで、何気なく話したことが
俊哉の耳に入った
「俊哉さん、さすがですね~
伝説みたいな恋愛してるのに
他のイケてる女までものにするなんて」
俊哉は美奈子と付き合い始めてから
そんな連中からは離れていたのに
この辺りの悪は俊哉を敬愛しているから
顔を見ると、すぐに話かけてくる
その話を聞いた俊哉は舞い上がった
いや、浮気する気はないが
今まで付き合った女の中ではピカイチだ!
浮ついた気持でコーヒーを飲みに来るようになった
佐由美の彼氏のことは知らないが
敏感に俊哉が変わったことはわかった
俊哉が誰にでも言うようにふざけて
「ねえ、電話番号、教えてよ!」
京子はその言葉が出ることを予想して
常に小さなメモに電話番号を書いて持っていた
会計をするときに、お釣りと一緒に素早く渡した
俊哉もまんざらでもない気持ちと、それから半分くらいは
京子に持っていかれている気持ち
そして、それが、実際のメモになって表れた時には
美奈子のことは忘れていた