逃亡

しばらく女は私をにらみつけていた

さて、逃げようか?

でも、どうして私を狙っているのか

それは聞いてみたい

そうじゃないと、どうしようもない

私は腹を決めると、ちょっと、待っていることにした

その気持ちが通じたのか、女はワシワシと私に向って歩いてきた

ベンチに座った私の前に立つと

 

「あんた、あの男と暮らしてるけど

あれは、血なんか繋がっていないんだろう?」

 

警戒していたほど変な女ではなかった

まぁ、普通のことを聞いてきた

挨拶はなかったが

 

「こんにちは

私に何か御用なんでしょう?

よかったら、ここに座らない?」

 

驚いたことに素直に横に座った

 

「私、あんたに驚いてる!

ただの田舎のばあちゃんじゃないんだね」

 

ひえ~そんなに私のことを見ていたのかい

怖いもんだ

 

「あんたが東京に出てくる時から

ずっと、つけてたんだよ」

 

ストーカー?こんな婆さんにおばちゃんのストーカー

警察も相手にはしないだろうな