逃亡
「ショウは?」
チェリーがショウの荷物が無くなっているのに気が付く
チェリーはショウの賢いまっすぐなところに
やっと、最近気が付いた
拓の化けの皮をはいだ姿に幻滅している
このままショウと結婚して生まれてくる子供を
一緒に育てたいと思っていたのだが
拓が現れたころから、ショウはチェリーに対して
もう、恋はしていないことに気が付いた
「出て行ったよ!ショウだって夢があるんだからね
その夢に向かって歩き出したんだよ
あんたたちみたいな
人間に付き合っちゃいられないって事さ」
拓は少し寂しそうに
「いいやつだったもんな
頭もいいし、気も利くし、仕方ないよな」
チェリーも納得したみたいに頷いた
私は訓戒めいたことを話す年寄りは大嫌いなのだが
「恵まれた場所に生まれたことにも気が付かなかった
チェリーに呆れたんだよ」
チェリーは今、そのことは身に染みているようだった