タケオという男
発達障害の母
結婚してどのくらいで恋が冷めて
母の本当の姿に気が付いたかはわからないが
それは比較的早い時期だったと思う
父の母、私の祖母にあたる人は割と早くに亡くなって
その後に後妻である香苗さんが来たのだ
香苗さんには二人の子供もついてきた
姉のほうはちょうど父と同じくらい、そして弟は
超絶美形の五才下くらい
香苗さん自身も美人で芸者さんだったとかいう話もある
もう、昭和の始めの頃の話だ
その姉のみつさんと父を結婚させようという話が出ていたらしい
その頃の祖父は金銭的にも羽振りがよくて
二人が暮らす家まで建ててあった
タケオという男
発達障害の母
父は田舎の公務員で出世もしなかったがバカではなかった
父っ子である私は小さなころから
父からいろいろな話を聞いていた
それは今思い出しても理屈の通った、感情的など
薬にしたくてもない、楽しく興味深い話だった
母は父を派手好きで男らしい人
そう子供たちに話していて、弟はそう信じていたようだ
でもそういう人ではなかった
派手に人の口に上るなんか絶対に好きではない人で
それは母の希望、母が父の本質になんてまるで興味がなく
ただ、自分のこうあるべきという愛を押し付けていただけだ
恐ろしいことだ
母と父は皆からは恋愛結婚だと思われ
母がそれを吹聴して回ることで成り立っている
父は結婚して半年もたたないうちに
母が普通でないことに気が付いたようだ
発達障害の母
私はごく若いころから
多分、中学のころから恋愛結婚に憎悪を抱いていた
父や母の世代はほとんどがお見合い結婚
親族の中で物のわかった伯母や伯父などが
その子にあった相手を探してくる
その親族までも調べて、一番釣り合った相手を見つけてくれるのだ
どうして父や母はそうしなかったんだろう
父の親族はどちらかというと誰もが遠慮がちで
人を支配するなんて考えもしない
多分、それは立派なことだったのだろうが
父の恋愛結婚のせいで、私は一生
母について悩まなければいけないのだ