タケオという男

ミルクティーを飲みながら

「ねぇ、ハーミー、ちょっと聞いて
朝、一番にお味噌汁をちゃんと出汁を取って作るとさ
最高の油揚げとか買いたくなって
予備校終わりに、デパ地下とか回ってみるんだ
卵焼きもすごくうまくなったよ
今度食べさせてあげるよ
そして、洗濯して洗濯とかしながら単語を覚えたりするんだ」

速水はまるで知らない男だと思う
でも、このタイプは大好きだ
黒い髪の毛にバングルは重くて、黒縁の眼鏡が似合って
ものすごくかわいい
服もどれもブランドものだったのに
今はすっかり、ユニクロ

「あ、この服、ユニクロなんだよ
生活費をもらっている身で高い物は買っちゃいけないよね」

速水はミルクティーに砂糖をたくさん入れて飲むタケオを笑ってしまう
ドンペリなんかボトルで飲んでいたのに・・・・

タケオという男

ミルクティーを飲みながら

「ねぇ、ハーミー、ちょっと聞いて
朝、一番にお味噌汁をちゃんと出汁を取って作るとさ
最高の油揚げとか買いたくなって
予備校終わりに、デパ地下とか回ってみるんだ
卵焼きもすごくうまくなったよ
今度食べさせてあげるよ
そして、洗濯して洗濯とかしながら単語を覚えたりするんだ」

速水はまるで知らない男だと思う
でも、このタイプは大好きだ
黒い髪の毛にバングルは重くて、黒縁の眼鏡が似合って
ものすごくかわいい
服もどれもブランドものだったのに
今はすっかり、ユニクロ

「あ、この服、ユニクロなんだよ
生活費をもらっている身で高い物は買っちゃいけないよね」

速水はミルクティーに砂糖をたくさん入れて飲むタケオを笑ってしまう
ドンペリなんかボトルで飲んでいたのに・・・・

発達障害の母

母方の母の兄妹は知性のかけらもない人間たちなのだが

計算は得意で、特にお金が絡めば間違いはしない

そんな人間たちばっかりで

私は子供のころ、母の実家に親族が集まるときは

とにかく何もしゃべらない大人しい子供で通っていた

父のほうの親族からは、どっちかというとおしゃべりで

アクティブな子供で通っていた

父のほうの祖父も伯父たちも、その妻たちである伯母たちも

誰もみなおしゃべりな私の話を面白おかしく聞いてくれた

そんな子供であった私にとって

小さいながらも母の親族は話すに値しない人間たちばかりだった

母の実家で親族がそろう時にはやたらぎゃあぎゃあと

お互いの文句が飛び交うような集まりだった

六歳くらいの私の目から見れば

まるで動物園と同じで、この人たちと

まともにしゃべる必要があるとは思えなかった

タケオという男

もちろん都内の中流家庭がおおく住まう一軒家で育ち
父は一流企業のサラリーマン、母は女子大出
保育園ではない、幼稚園に通って専業主婦の母が迎えに来る
小学校受験をするには所得が少し足りないが
中学受験は一応考えている家
しかし、小学校時代は受験勉強よりもサッカークラブで
のびのびと楽しく運動をさせたかった
もちろん、勉強だっておろそかにはせていない
幼児教育から英語はやっているし、科学の実験教室
算数専門塾などにも通っていた
中学に入ってからは一年生の時から偏差値の高い都立は
確実に行ける学力はつけさせてくれて
夏冬の休みには家族旅行にも行く家
それも、ハワイだとかではなく、家族でトレッキング
なんて家で育ったのがタケオなのだ

高校受験に失敗したからと家を飛び出して
怪しい歓楽街で体を売る仕事を覚えたタケオのほうが
本来のタケオではないのだ


発達障害の母

母の兄妹は多いから必然的に従妹も多くなる

その多くの従妹たちの中でも

母の実家、本家の長男の子供たちが好きではないのだ

まるで母と同じような思考回路

もちろん、発達障害なんかではない

わたしよりも数年上の者や年下の従妹もいるのだが

だいたい同じくらいで、

どの子も地元ではそれなりの高校には入っている

母を発達障害だから嫌いであるのではない証拠は

この従妹たちである

性格がみんな母にそっくり

そして、その性格が嫌いなのだ

どの子も、まず、自分のことしか話さない

話を聞くのは上から目線で意見を言うためだ

タケオという男

タケオは無邪気に自分がうまくいっていることを
報告したいのだ
会いたいとタケオが言い、速水がそれなりの店を用意する
速水は前の夜の仕事だったタケオならば
最高級の肉でもワインでも週に一度くらいは
食べたり飲んだりできる環境だったが
今はそうはいかないだろうと
高い高級な店を用意する

タケオは無邪気に喜ぶが

「あ、酒はやめとく
社会の暗記が進まないんだ、
それに英語の試験もあるし」

そんなことを言うタケオに驚きだ

「なぁ、速水、聞いて!
すごいんだよ、俺、けっこう偏差値の高い大学狙えるかも」

「そっか、勉強があってるんじゃない?」

「いやいや、今は朝一番にやることなんだと思う?
鰹節でちゃんと出汁を取って味噌汁を作る
そして、アジの開きを焼くんだ
どう?すごいでしょう?」

その変わった自分が大好きだと言うように
楽しく報告する

発達障害の母

それは母の実家の自慢である

母も母ではあるが、母の実家こそ私は大嫌いなのだ

もちろん、父が母を選んで結婚したのが

すべての私の苦しみの元なのだが

私は愛情をもって育てられたのが父だったから

どうしても父を擁護する気持ちになるのだ

父が母に恋をしたのが若気の至りだったのか

発達障害でまともなことはできないくせに

自分の思い通りにすることにはずる賢く長けている

母の作戦勝ちだったのかはわからないが

嫁に出すなら出すで、しっかりしつけも教育もできなかった

母方の祖父母が大嫌いなのだ

だいたい母の実家は時代がそうだったとはいえ

だらしない限りだ

母の兄弟は8人はいるし、それ以外に祖父の愛人の子供が

四人入るのだ

お金もないくせに子供ばっかり作ったら

母のようなはぐれ者だ出来るのは仕方のないことだ