その先

「あ、覚えてくれてたんですね

私は別にあなたに対して

どうこう言うつもりも

するつもりもありません

あの時は私には

なんのことかわからないままで

こうして、田舎から東京に出てきて

あの時、風香に何があったのか

知りたいだけです

あ、もちろん、話したくなければ

全然、結構ですけどね

だんだん歳をとってきて

心残りなく死ぬことが

目標になってきたものですから」


橋本はしばらく考えると


「明後日の夜

よかったら、夕ご飯でも一緒に」


そう言って、高い料亭の名前を言った