2020-04-19 その先 「僕はあの頃、荒れていましてね」「え?全然、そんなふうには見えませんでしたよ高校に家庭の事情で行けない優等生って匂いをぷんぷんさせていて私はあの、電車の中の恋だの愛だのでチャラチャラした空気に辟易してましたから新鮮でしたよ」「ああ、やはり、同じことを考えていたんですね私もそうでしたでも、私は辟易というよりもっと、過激に見下していました僕は中学三年の秋までお隣の町の中学でいつも成績はトップで、父は役場の職員で母はあの頃の田舎では珍しい音大出身のピアノの先生でしたそれまで、いい気になってたって言うのもあるんですがね」