その先

「僕はあの頃、荒れていましてね」


「え?全然、そんなふうには

見えませんでしたよ

高校に家庭の事情で行けない優等生って

匂いをぷんぷんさせていて

私はあの、電車の中の

恋だの愛だのでチャラチャラした空気に

辟易してましたから

新鮮でしたよ」


「ああ、やはり、

同じことを考えていたんですね

私もそうでした

でも、私は辟易というより

もっと、過激に見下していました

僕は中学三年の秋まで

お隣の町の中学でいつも成績は

トップで、父は役場の職員で

母はあの頃の田舎では珍しい

音大出身のピアノの先生でした

それまで、いい気になってたって

言うのもあるんですがね」