その先

ある日、彼が何かの拍子に

本を落とした

気がついた私が先に拾おうとすると

夏目漱石の本だった


本を拾ってあげながら


「あ、コレ、私前に読んだ

なんか、考えちゃった」


そういうと


「『向上心のない奴は馬鹿だ!』ってとこが俺は…」


彼がそう言った途端

私も


「あ、私も同じとこ

私はなんで向上心のない奴は馬鹿なのって

思うけど」


すると、その彼は


「俺は反対だ!」


その目には憎悪があって、私は

一瞬怯えた