風邪をこじらせて

いくら待っても人は来ない

しばらくすると、戸田君は大声で助けを呼んだが

それでも来ない

それはそうだ、体育倉庫は校舎から一番離れたグランドの隅だ

そのうち雨が降って来て

五月の中旬だと言うのに、寒くなった

私がマットの隅で震えて座っていると

戸田君が意を決した様に

 

「こういう時って、くっつくとあったまるって言うじゃん

ちょっと、くっついていいか?

体操服じゃ寒すぎる」

 

私も寒くて死にそうだった

それに、学年で一番のイケメンで爽やかな戸田君だ

だいたい、二人が付き合い始めたと聞いたときから

安住にはもったいないと、誰もが心の奥で思ってたはずだ

私が嫌そうじゃないのを察したのか

何も言わないのに、いきなり彼は私を抱きしめた

戸田君の理性はそこで終わりだったし

私も戸田君ならばいいやと思っていた