誘惑の花
連絡を取ると、父親は少し逡巡していた
自分の娘だからぜひ会いたい!
そう言う気持ちがないとは言えないが
彼の場合、親として無責任なのではなく
父親としてどう接していけばわからない
そんな気持ちであるように思えた
日曜日にスピカを連れて、あのアパートの行った
小さかった頃だとは言え、いい思い出のなかったところだ
迷ったのだが、スピカはあまり覚えてはいないようだった
お父さんのところに行く
そのことに冒険のような気持を持っているようで
たくさん読んだ本や漫画の知識から
冒険には勇気を持って出かけなければ!
そんな健全で面白い気持ちでいるようで
京子は嬉しくなった
太っていて眼鏡をかけて、大きな体
娘と会うと言うので気を使ったのか真っ白なTシャツ
胸には小さな猫のプリント
できるだけ娘に好印象を与えたいと思っているようだった
そして、笑顔を忘れないようにとぎこちなく口角をあげている