逃亡
しかし、世の中はもう確実にそんな時代ではない
私たち村の若い者たちは、みんなで力を合わせて
色々と協力してあげたし、その部落と呼ばれる若い人たちとも
協力してとても良い結婚式が行われた
だからどうという話ではないが
その半年後くらいに私とゆかりさんと一番仲が良かった
うちの村の女の子と尋ねて行ったことがある
その家は暗く、不衛生な感じで
台所の土間の奥の畳の間に通された
そこが一番まともな場所なのだそうだが
破れた畳や染みだらけの座布団に
二人とも笑って座るのがやっとだった
あの、優しくて清潔なゆかりさんが
油じみた髪の毛に何日も洗っていないような服を着て
お茶出してくれたが
私たちは、そこに座る前にそこの親が畑仕事から帰って来て
台所に置かれた薬缶から、夜間の口に口をつけて飲むのを目撃していた
田舎のことだから、田んぼの仕事が忙しい時は
薬缶に麦茶を作っておにぎりと一緒に
外で飲んだり食べたりすることはあった
しかし、村の年寄りでもうちの村では家で
そんな風に飲む者はほとんどいない
だいたい、冷蔵庫に冷えた麦茶なり入れていて
コップで飲むのが普通だ
ゆかりさんもそんな生活をしていたはずなのに
その時、その薬缶を洗おうともせずに
私たちの前で水を入れて沸かし始めた