誘惑の花
園田敏夫
何事もそつがなく、でも誠実で
一緒に働いていても、彼が自分に恋しているのはよくわかる
「京子!ちょうど、もらったチケットがあるから
コンサートに一緒に行かない?」
多分、京子の趣味を調べて、
必死にチケットを取ってくれただろうに
そんな風に声をかけてくれる
見え見えだけど、気分は悪くない
彼に対して恋心は持っていないが
一緒にいて楽しい相手だ
その夜も食事をし京子の部屋の下まで送ってくれた
そろそろ部屋に誘ってもいいかなと思っているが
敏夫のほうが、そんなことは全く考えていない
と言うように、さっさと帰ってしまうので
苦笑しながら見送る
「じゃ、京子!また、明日な!」
そんな風に爽やかな後ろ姿も悪くない
でも、ものすごくやせ我慢している空気も
まるわかりなんだけど・・・
小百合の幸せ
誘惑の花
ゆすり、たかりもするような話も
何人かの知り合いからは聞いた
そんな人間だろうか?
一緒に過ごした時間は、短く
付き合ったと言っても二か月もないくらい
京子は彼の中に、京子と通じるような
何かを感じていて、それが数か月たった今でも
心にわいてくるのだ
東京に出て来て仕事は面白い
男たちは学歴も人柄もいい人間がたくさんいる
見た目だって悪くない
ただ、京子はいちいち、俊哉に知性があってスーツでも来せたら、もっと、素敵なんじゃないか
そんなたわいもないことを想像して
会いたいと思っている自分が悲しすぎる
それから半年、もう、そろそろ
他の男と付き合ってもいいかもしれない
幸い、付き合わないかと言ってくれる男だっている
東京育ちで、小学校から私立!
中高はほとんどが有名大学に行く一貫校
仕事はできるし、まず、一緒にいて楽しいし
っ常識的
田舎育ちの京子にとっては、何もかもがあか抜けていて
少し戸惑ってしまいそうになる
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小百合の幸せ
誘惑の花
「あんなクズたちが、自立して暮らしたりすると思う?
あのあたりの人間はみんな実家暮らし
その美奈子って子もそうでしょう?」
京子はそんな事情に詳しくはなかったが
確かに佐由美なんかも彼氏とはホテル代がもったいないと
彼の実家に泊まりに行ったりしていた
京子からは信じられない世界だ
「間違いなく、中学の時の住所にいるわよ」
彼女の言うことにはいちいち、納得する
俊哉が世間的にはクズ中のクズなのもわかっている
それでも、住所を知れば
手紙を書こうと思ってしまうのだ
それも、ただ、『会いたい!』それを伝えたいだけだった
返事が来るとは思っていなかった
田舎の友人の言葉は事実としてわかっている
俊哉がお金の計算はできたとしても
九九が言えるかどうか?
漢字が書けて読めるのか?