恋をしたとき
逃亡
「私、会社で調査室にいたことあるんで
ちょっと、心当たりある人に調べてもらいます」
美佐子さんはそうあっという間に決断すると
息子の弁当と拓の朝食を用意した
拓は帰ってくると嬉しそうに、それを見つけて
「お義母さん、ありがとうございます!いただきます!」
「お義母さん!!!!
ちょっと、拓!甘えすぎだし
あんたは美佐子さんって呼びな!
まだ、籍が入っただけなんだから」
すると、拓は嬉しそうに
「美佐子さんって呼んでもいいっすか?
俺もそうしたほうが自然だと思うんすけど
美佐子さんがそう呼べって」
そう言いながら完璧な和食の朝ご飯をかっこんでいる
美佐子さんは笑いながら
「いいんですよ
私もそう呼ばれると息子さんと本当に結婚したんだな~って
嬉しいし、チェリーちゃんもママって呼んでくれるんですよ」
まあ、なんといい人だろう
すると、息子が起きてきた
息子は朝は薄いトーストにマーマレードを付け
ブラックコーヒーだそうで
さっと、熱々のトーストを差し出す
「あ、おはよう!ありがとう!」
私は遠慮なく
「美佐子さん、こんな息子のどこがいいのかね~」
「あ、陽介さんはセクシーなんで」
拓が思わず朝ご飯を吹いた!
私は大笑いしてしまう
確かに、夫もそうだった
息子は笑いもせずに会社に行く準備をして弁当を持って
出て行った
恋をしたとき
逃亡
「こっちのほうこそ、こんな風に転がり込んで
悪かったね~実はね・・・」
彼女にはすべてを話しておいたほうがいい
そう感じて今までの経緯を話す
何と言っても私は年寄りで、
いつ、コロッと逝ってもおかしくない
そうなると、チェリーの力になれるのは
この、義母しかいない
息子はそう、あてになるもんじゃないし
拓がしっかり独立してチェリーやシェリーを
養えるようになるには、まだまだ、随分かかりそうだ
「お母様のアパートをぐちゃぐちゃにしたのが
拓さんが関係している組織の人間なのか
もしくは全く関係のないただの泥棒なのか
そこをしっかり把握しないと安心はできませんね」
しっかり的確な返事が返ってくる
息子は夫と同じように顔で女を選ぶタイプだが
美佐子さんは頭もよくてしっかり者で美人だ
恋をしたとき
逃亡
「はい、私もそのほうがチェリーさんのためだと思いますが
まだ、子育てにもなれない様子
夜中の授乳も大変そうですから
しばらくはシェリーちゃんのために頑張ってもらって
少し落ち着いたら、食事の準備や掃除は
手伝ってもらおうと思っています」
完璧な答えだ
あまり深い話は聞きたくはなかったが
つい
「美佐子さん、もう籍は入っているのかい?
あまり無理しないでいいんだよ
だいたい、あの息子がどこでこんなできた女の人を
見つけてきたのかね~」
すると、美しい卵焼きを焼きながら
「私、彼の部下だったんです
籍は・・・お母様にご挨拶もしないで
入れてもらっています」
「ああ、別に私に報告なんかすることはないよ
お互いがそれで幸せなのが一番だからね」