おばさんであること

ひどいこと・・・・

美也は大輔の周りの男の子たちを思い出す

どの子も家柄のいい子たちで、頭もよくて

女の子が付き合うには何の問題もなさそうだ

普通に考えると、大輔の学校の子と付き合えるのは

女の子にとって自慢じゃないのだろうか

ああ、女子に告られて、断るなんてことはありそうだ

スミカの周りの女の子ならば

当然断るだろう

そんなことで大輔に近寄ってもらっては困る

 

「ひどいことって、仕方ないでしょう?

だって、好きになるのはどんなタイプかなんてわからないし

断られることはあると思うけど」

 

少し諭すように言う

スミカはサラダを食べながら

 

「だから嫌いなのよ!

あんたたちみたいな人種

私の友達ならどうせロクな人間じゃないから

何してもいいって思ってるんでしょ

あそこの制服振りかざして、女の子をひっかけて

自分たちの根城に連れ込んで、何人かで好きにするって

どういうこと?」

 

「まさか・・・・」

 

ただ、毎日を

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あの数年間、タケオのことは何も知らない
何があったのか聞くのも嫌だった
探さなかった負い目
実際にはタケオがいなくなってホッとしていた自分

それが、そんなことをしていたなんて・・・・

自分が一番わかっていたはずだ
受験、勉強、そこにどれだけのお金がかかるか
わかっていたはずなのに・・・
中学を出ただけで、この社会の中に入り込んで
結果、家に帰ってきたときに
有名私立大に合格しているなんて
普通に考えればすぐにわかることだったのかもしれない

夫はわかっていたのだろう

「このこと、ネットってやつでばらそうか?
その創業者の女はどうせそっち方面の出らしいから
怖くもなんともないだろうけど
あんたの息子、いや、嫁もやばいんじゃない?
特に嫁は今もファンがいて伝説みたいになってるらしいから
今、正体をばらしたら
きっと、すごいことになるよ」

この爺さんは孫からいろんなことをレクチャアされたらしい
いや、孫が黒幕でこいつが手先なのだろう

おばさんであること

スミカはよほどお腹がすいていたらしく

考える暇もなく

 

「助かる!」

 

そう言った

ファミレスのテーブルに着くと

すぐにドリンクバーに走り

コーラをがぶ飲みした

サラダと和風のチキンをたのんだ

 

「遠慮しなくていいのよ

なにか、もっと、栄養のあるもの食べれば?」

 

「今、コーラのんだから、落ち着いた!

水も買えなかったからフフフ

それに、絶対太るわけにはいかないの

可愛くないと商売にならないから」

 

美也は驚いた

何の仕事をしているのか、薄々わかってはいたが

ちゃんと、考えている

二十歳やそこらで何でこんな生活をしているんだろう

さっきの話から、大輔と本気で付き合うとかはないらしい

しかし、気になって聞いてみる

 

「大輔とは・・・」

 

「ああ、安心して大ちゃんと付き合う気なんかないから

あたし、一度でいいから高慢ちきなあそこの制服の男子を

見返してやりたかっただけ

前につるんでた子が、あそこの男子にひどい目にあったからね」

 

ただ、毎日を

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男娼?
真澄にはその言葉の意味も分からなかった

「あんたの息子、高校には行ってないだろう?
家出でもしてたのかい?
うちの息子がその手の掲示板ってやつを調べ尽くして
どうやら、これがタケオって息子の
17歳くらいの時の画像だよって出してくれたのさ
うちの孫、すごいだろう!」

そのスマホの画像は美しい美少年で
今よりずいぶん華奢ではあったが
タケオに間違いなかった

「本物だったんだな!
うちの孫のパソコンの腕に間違いないってこったな
この画像はその頃、ずいぶん話題になって
その彼をネットの画像だけで買いたいって
金持ちが殺到したそうだよ
2チャンネルなんて言う、便所の落書きみたいなとこがあるんだって?
孫はそこを徹底的に調べてくれたんだよ」

おばさんであること

美也は、二人の話を聞いて

それとなくスミカを調べ始めた

探偵社の調べではスミカに特定の居住地はないと言う

それだけでも驚きだ

今はだいたい、池袋のネットカフェで生活しているらしい

美也はそのネットカフェに行ってみた

そんな場所、専業主婦の美也には全く関係ない場所で

ただただ、胡散臭い場所なのだが

そこの前にしばらくたっているとスミカが出てきた

ジャージの上下で旅行用カバンを引きながら

暗い顔をしている

メイクを落とした顔はまるで病人のように青白い

病気なのではないか?

美也はそう思うと言葉をかけるつもりはなかったが

 

「ねぇ、あなた、どこか悪いんじゃない?」

 

そう、声に出した

スミカはすぐに美也だと気が付くと

うっとおしそうに

 

「何?大ちゃんとは最近会ってないよ

あんたの息子じゃ食べていけないからね」

 

「ご飯、食べてないの?」

 

「嫌なオヤジにあたっちゃってさ

こっちが油断してる好きに、お金払わずに逃げやがった」

 

美也には何のことかわからない

 

「ご飯、食べる?

そこのファミレスにしましょう」

ただ、毎日を

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みぃのことなら、前から気に入らなかったのだ
仕事はできるかもしれないが
結婚もせずに子供を作って
いつだって、派手に暮らしている
付き合わなければいいだけだ

「あんたの息子、今、そこで働いてるんだろう?」

真澄はきっとなって

「タケオはまともなことしてますよ
海外事業部ですからね
でも、あの子は知らなかったんですよ!」

すると、従弟はハハハハハ!と高笑いして

「あんた、何言ってるんだい?
あんたの息子、ものすごい美少年で
男娼やってたんじゃないか!
それも、中学を出てすぐにやりだしたってさ!
あんた、知らなかったのかい?
そうだろうね~
知ってたら、人に会えないよね」

おばさんであること

美也は何も言えないまま

妹のハナが部屋に入ってしまって

塾に行く気がないのを黙って容認した

 

しばらくして大輔が出てきたが

顔も合わせられない

 

どうしていいのかわからない

そんな日が続いて、三人で会う日がやって来た

美也は今こそ、彼女たちに会いたいと思った

三人そろうと美也はすぐに

 

「ねえ、聞いて!実は・・・・」

 

と立て板に水を流すように今までのことを話した二人とも黙って聞いていたが

 

「自慢のお兄ちゃんがそんなことになるなんてね~」

 

明美少しうれしそうだ

美也はそれは覚悟の上だ

徹君のことを心の中で、少し呆れて聞いていた自分がいたから

そう思われても仕方がない

 

「私なら、子供がいないからわからないけれど

その、女の子、なんか意図があるんじゃない

バカそうだけど、いちいち、美也のこと見て

挑発してくるんでしょう?

ただ、大輔君を好きってだけじゃなさそうじゃない

女の子って、男の子を好きになったりすると

もっと、しおらしくなるんじゃない

家族には気に入られたいとか思うものじゃない」

 

すると、明美

 

「そうだよ!

うちのバカ息子の彼女とかも

すっごく猫かぶって私の前では大人しくしてたよ

ホントはとんでもない雌猫のくせにさ」