おばさんであること
ひどいこと・・・・
美也は大輔の周りの男の子たちを思い出す
どの子も家柄のいい子たちで、頭もよくて
女の子が付き合うには何の問題もなさそうだ
普通に考えると、大輔の学校の子と付き合えるのは
女の子にとって自慢じゃないのだろうか
ああ、女子に告られて、断るなんてことはありそうだ
スミカの周りの女の子ならば
当然断るだろう
そんなことで大輔に近寄ってもらっては困る
「ひどいことって、仕方ないでしょう?
だって、好きになるのはどんなタイプかなんてわからないし
断られることはあると思うけど」
少し諭すように言う
スミカはサラダを食べながら
「だから嫌いなのよ!
あんたたちみたいな人種
私の友達ならどうせロクな人間じゃないから
何してもいいって思ってるんでしょ
あそこの制服振りかざして、女の子をひっかけて
自分たちの根城に連れ込んで、何人かで好きにするって
どういうこと?」
「まさか・・・・」
ただ、毎日を
おばさんであること
スミカはよほどお腹がすいていたらしく
考える暇もなく
「助かる!」
そう言った
ファミレスのテーブルに着くと
すぐにドリンクバーに走り
コーラをがぶ飲みした
サラダと和風のチキンをたのんだ
「遠慮しなくていいのよ
なにか、もっと、栄養のあるもの食べれば?」
「今、コーラのんだから、落ち着いた!
水も買えなかったからフフフ
それに、絶対太るわけにはいかないの
可愛くないと商売にならないから」
美也は驚いた
何の仕事をしているのか、薄々わかってはいたが
ちゃんと、考えている
二十歳やそこらで何でこんな生活をしているんだろう
さっきの話から、大輔と本気で付き合うとかはないらしい
しかし、気になって聞いてみる
「大輔とは・・・」
「ああ、安心して大ちゃんと付き合う気なんかないから
あたし、一度でいいから高慢ちきなあそこの制服の男子を
見返してやりたかっただけ
前につるんでた子が、あそこの男子にひどい目にあったからね」
ただ、毎日を
おばさんであること
美也は、二人の話を聞いて
それとなくスミカを調べ始めた
探偵社の調べではスミカに特定の居住地はないと言う
それだけでも驚きだ
今はだいたい、池袋のネットカフェで生活しているらしい
美也はそのネットカフェに行ってみた
そんな場所、専業主婦の美也には全く関係ない場所で
ただただ、胡散臭い場所なのだが
そこの前にしばらくたっているとスミカが出てきた
ジャージの上下で旅行用カバンを引きながら
暗い顔をしている
メイクを落とした顔はまるで病人のように青白い
病気なのではないか?
美也はそう思うと言葉をかけるつもりはなかったが
「ねぇ、あなた、どこか悪いんじゃない?」
そう、声に出した
スミカはすぐに美也だと気が付くと
うっとおしそうに
「何?大ちゃんとは最近会ってないよ
あんたの息子じゃ食べていけないからね」
「ご飯、食べてないの?」
「嫌なオヤジにあたっちゃってさ
こっちが油断してる好きに、お金払わずに逃げやがった」
美也には何のことかわからない
「ご飯、食べる?
そこのファミレスにしましょう」
ただ、毎日を
おばさんであること
美也は何も言えないまま
妹のハナが部屋に入ってしまって
塾に行く気がないのを黙って容認した
しばらくして大輔が出てきたが
顔も合わせられない
どうしていいのかわからない
そんな日が続いて、三人で会う日がやって来た
美也は今こそ、彼女たちに会いたいと思った
三人そろうと美也はすぐに
「ねえ、聞いて!実は・・・・」
と立て板に水を流すように今までのことを話した二人とも黙って聞いていたが
「自慢のお兄ちゃんがそんなことになるなんてね~」
明美少しうれしそうだ
美也はそれは覚悟の上だ
徹君のことを心の中で、少し呆れて聞いていた自分がいたから
そう思われても仕方がない
「私なら、子供がいないからわからないけれど
その、女の子、なんか意図があるんじゃない
バカそうだけど、いちいち、美也のこと見て
挑発してくるんでしょう?
ただ、大輔君を好きってだけじゃなさそうじゃない
女の子って、男の子を好きになったりすると
もっと、しおらしくなるんじゃない
家族には気に入られたいとか思うものじゃない」
すると、明美も
「そうだよ!
うちのバカ息子の彼女とかも
すっごく猫かぶって私の前では大人しくしてたよ
ホントはとんでもない雌猫のくせにさ」